印刷 高速道路 1000円 機械仕掛けの林檎 The half way 3 (カテゴリ:小説 ジョ×阿紫) 忍者ブログ
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 終わりませんでした。4に続きます。
 未成年者の閲覧マジ禁止。

 ムリヤリ気味なジョと、Mっ気ありそうな阿紫花のそういう場面。
 男同士でアレコレしてますので、熟成してない腐女子(チーズか)はブラウザ閉じて下さい。
 アタクシはブルーチーズよ、という猛者な貴腐人だけお楽しみ下さい。

 ……チーズなんて本文に一個も出てきませんよ。(ボソ)
 本当になんつーか、「こんなのジョージじゃないわ!」「阿紫花はこんな女々しくない!」という叫びが、聞こえてきそうで怖いです。

 BGM:R・ed Frac・t・ion / M・il・l
 ピッチ換えて低音にした、男みたいな声にしたヴァージョン。

The half way 3 


「お前は置いていく」
 ガチッ、と音がした。
 怒りのあまり、阿紫花は自分の舌先を歯で噛み破っていた。
「~ふざけんなッ!!」

 ぱっ、と口から赤い唾液を撒き散らす。しかし阿紫花はその事にすら気づいていない。
 怒りで目の色が変わっている。そのまま怒鳴り散らすのかと、ジョージは早くも耳の奥が痛む感覚すら覚えた。
「……!」
 だが何かを叫ぼうとした阿紫花は、そのままの顔で数秒固まった。
 顔から感情的な色が消えていく。
 完全に表情が無くなった瞬間、阿紫花は--哂った。道中で時折見せた、煙草を咥えて斜に構えた態度だ。
「……そいつァねえでやしょ」
 阿紫花は睨むように哂った。

(--馬鹿ではないらしい)
 ジョージは密かに値踏みする。
 派手に騒ぎ立てれば相手を動かせる、と思い込んでいるような愚か者ではないらしい。当たり前か、曲がりなりにも阿紫花は人間にしては上出来な人形遣いだ。ジョージはヤクザの世界は詳しく知らない。だが阿紫花が殺し屋を長年やってきて生き残っている人間なら、「馬鹿ではない」か。いや、
「早死にするぞ、阿紫花」
 傍で見て危な気な人間は皆、馬鹿に見える。馬鹿は早く死ぬ。
 ジョージの冷たい視線に、阿紫花は鼻を鳴らす。
「……アンタ、人相占いでもやってんでェ?えっらそうに……」
「人形と人形破壊者の世界に、人間など必要ない。人間の人形遣いなど、ただ一度の戦いも生き残れない。速度も、パワーも、強度も、何もかも、人間は人形以下、しろがね以下だ」
「……ケッ……なら、あたしはアンタとは大分遠いこってしょうねえ。安心しやしたよ。胸クソ悪ィ銀目野郎たァ、天と地ほども離れてンだ」
「そうだ。近づくな。阿紫花」
 阿紫花の顔に鼻先を近づけ、ジョージは言った。
「私もお前のような半端な人間には、近づきたくない」
 ふわ、と、甘い匂いが阿紫花の鼻先をかすめた。果実のような。
(香水?……)
 場に似合わない香りに、阿紫花は鼻白む。
 不意に、女の芳しい柔らかい肌を思い出してしまった。
(女、抱きてえなあ……)
 目を伏せてしまった。女の肉の感触を思い出して、怒りが少し萎えた。
 ストレスを感じると、単純に癒されたくなる。
「……近づいてんのは、アンタでやしょ……」
 そう阿紫花が呟くと、ジョージは黙り込んだ。

 何か、嫌な感じがしている。阿紫花は気づく。
 覚えがある、空気だ。
 ジョージの沈黙が気持ち悪い。
 --先刻自分は、どうしてバスローブのベルトをしっかりと締めて出てこなかったのだろう。暴れた弾みでバスローブの前が全開になっている。へその下まで丸見えだ。
 黙って見下ろしてねえで何か言いやがれチクショウ--と、口に出せない。空気が重い。
 逃げたい。いつものようにうまくやらなくては。血迷った連中をかわすように、逃げなくては。銃を拾えるだろうか?
 場の雰囲気を変える何かが欲しい。ジョーク?タンカ切る?何故だろう、どれも効果が想像できない。人形め、どうしたらいい?
 阿紫花は数秒考え、覚悟を決めた。
 媚びて隙を作る。

「……血が、」
 阿紫花は呟いた。「痛ェ」
「……」
「ジョージさん、……」
 ジョージに掴まれた右手を、わずかに動かす。
 上目遣いに囁いた。
「あたしの痛ェトコ--舐めてやっちゃくれやせんか」
「……」
 ぴくり、と、ジョージの手が動いた。
「ね……あたしの右手、離して……」
 阿紫花はやるせない口調を装って小さく呟く。
 --これで我に返るか、それとも隙だらけになるか。出来れば前者であってほしいが、後者でも構わない。右手が開放されたら銃を拾える。
 先ほどの鮮やかな怒りなど、とうにどこかへ行ってしまった。今は鈍く不快なだけだ。そもそもジョージは怒ってはいなかった。そんな相手に本気で怒りをぶつけても、どうしようもない。
 ジョージは悪意なしで人を不快にさせる男だと、ここ数日で分かっていたはずだった。しかしどうやら阿紫花も、爪を剥がされて自分で思う以上に動揺していたらしい。今頃になって、「嘘泣きでも泣きついたら普通に許してくれてたんじゃねえのか」と思い始めている。
 だが今となっては、泣きつくなど出来る空気ではない。いやいっそおどけて見せようか。子どものように拗ねて白けさせるとか。
 阿紫花は頭なの中で何通りもシミュレートする。
 だが。

「--何を企んでいる?アシハナ」
 ジョージの口から出たのは、そんな言葉だった。
「何の芝居だ」
「……芝居だなんて」
 案外目聡いでやんの、この薄ら馬鹿。--阿紫花は目を伏せてうっすら微笑む。
 ジョージが喋ったと同時に、空気が軽くなった気がした。
 多分大丈夫だろう。もっと砕けた言葉を選んでも。
 阿紫花は左手だけで肩をすくめ、
「ねえ、離して下せえよ。あたしもこんなカッコ、恥ずかしいんでさ。あたしを連れて行かない理由ってのは、後で聞きやすから。痛ェんですよ、指が……マジで役に立たなくなっちまいそうでさ」
「……」
「それに、雨に濡れてたもんで、風邪引いちまう。兄さん、ちょいと替えのバスローブ出してやってくれねえかい?それに指も、何か手当てしねえと……あたしの荷物に薬くれえありますから、自分で……」
「必要ない」
 ジョージに左腰から抱きかかえられるようにして動いた自分に、阿紫花は目を見開く。右手は握られたままだ。
「ちょ、何……」
 どこへ連れて行く?--そう思った瞬間、目に入ったのはでかいベッドだった。
「ジョージ……っ」
「痛いのだろう?」
「何言って……」
 ぼん、とベッドの真ん中に放り投げられ、阿紫花は身を丸めた。スプリングが効いてボールのように身が弾む。
「……!」
 身を起こそうとした所へ、何かが目の前を動いた。目で追えないほど速く。
 気づくと両腕の手首を、何かで頭上に纏められている。金属だ。見覚えがある。
 両手首を戒める金属の輪が、アール・ヌーヴォー風のベッド柵に絡まっている。流水紋のようなツタと絡まるように手首を戒められた阿紫花が、警戒の声を上げる。
「……何の冗談でェ」
「右手は離した」
 銃を突きつけられたように、ジョージが両手を顔の位置まで上げてみせる。「『痛い所を舐めて』、か。指が痛いのだったな」
 ロングコートの裾が、風も無いのに不自然に動いている。ジョージが一歩足を踏み出す毎に、それは裂けて短くなっていくように見える。阿紫花はぞっとした。
 人形じゃねえ。--バケモンだ。
「アシハナ。--私は冗談は言わない」
 ジョージが、ベッドに膝を乗せる。
 ギシリ、と、神経を逆なでする音がした。
「……冗談じゃねえ」
「だから冗談じゃない」
 阿紫花に覆い被さるようにして顔を近づける。
「冗談などではない」
「……」
「そろそろ誰かが痛めつけるべきなのかも知れないな。二度と厄介事に首を突っ込まないように。二度と愚かな真似をしないように。二度とそんな気すら起きなくなるように」
 その静かな声に、阿紫花は戸惑った。
 ずっと以前にム所帰りの雄牛に迫られた。その時、阿紫花は心底冷めた心持だった。恐ろしく鼻息の荒い下衆野郎の延髄を、持っていた目打ちで貫いた。小指よりも細い整備用具。脳の呼吸を司る部位を破壊され、びくびくと痙攣しながらその男は絶命していった。
 死にいく体を腹の上に乗せ、阿紫花は冷め切って、「これを人形に使ったら、血糊で歯車が狂っちまう。新しい目打ちを買わねえと」としか考えていなかった。
 不愉快な経験なら、たんとある。欲情に脳味噌と下半身を滾らせている馬鹿なら一目で分かる。
 だが分からない。
「私たちが二度と顔をあわせなくても済むように」
 ジョージの静かな声に、阿紫花は戸惑う。
 何故--そんなに冷静な顔でいる。どうして--それほど憎む。
「あたしが何かしたのかよ」
 阿紫花は震える声で叫ぶように口を開けた。
「あたしがアンタに何をした!」
「……」
 阿紫花の、噛み破った舌から血を流すその口にジョージは。、
「私がお前を嫌いなだけだ」
 獲物に密かに噛み付くように口付けた。

「……っ」
 傷ついた舌に同じ器官で触れられ、鈍い痛みが走る。
 顎を掴まれ、顔を背ける事が出来ない。歯で舌を噛み切ってやろうとしれも顎が動かない。
 熱い。顎を掴む手の熱。口の中で絡む舌。
 目が眩む。
「は……」
 柔らかい舌にさんざ口内を犯され、酸欠になりかけた所で解放された。
 ぐったりと寝具の柔らかさに甘えていると、内股に触れる手に息を詰まらせた。
「よしゃあがれっ!……馬鹿野郎!」
 蹴り上げるように足をばたつかせ、阿紫花は叫ぶ。
「アンタ、野郎が好きな性質じゃねえだろ!」
 ジョージが阿紫花の顔を見る。
 阿紫花は苦々しく嘆息した。
「分かンだよ、……そういう野郎に目、付けられっから。……ム所で男覚えたヤツとかよ、見境ねえ。マジに鼻息ばっか荒くて、テント突っ張らせて……ああいうのを犬畜生って言うンだぜ。……アンタ、そういうンじゃねえだろ」
「……」
「なんか……アンタ、そういうヤツじゃねえ気がすっからよ……」
 だから退いてくれ、という気持ちで阿紫花は目を閉じる。
「そうか」
 ジョージが呟いた。
 右足の足首を持ち上げられ、阿紫花は目を開ける。
「お前の見込み違いだ」
「な……」
 する、と尻肉の奥に指が触れる。「ひっ、やめ、」
「ここに」
 指の爪先がわずかに捻じ込まれる。「私のを入れて射精する。それだけだ。……」
「~、抜けッ!嫌だ!そんな、や……っ」
 抉じ開けられた肉が引き攣る。「痛っ……」
「固いな」
 指が引き抜かれる。
 阿紫花は荒く息を乱している。心臓が速く鼓動して、痛いほどだ。
「は……」
 潤んだ目で見上げると、ジョージと目が合う。
 ジョージがベッドから降りた。
「……水を止めてくる」
 浴槽の水か。そういえば出しっぱなしだった。
 戻って来ないでくれ、と言いたかったが、力が抜けて何も出来ない。
 どうしてこんな事になる、あたしが何をした?--そう叫びたかった。
 手首の戒めを動かすが、がちゃがちゃと音が鳴るだけだ。取れそうにない。
「取れないぞ」
 ジョージが戻ってきた。
「人間の力では絶対に」 
 ジョージが何か持っている。
「……何持って来た」
「使えそうなものを」
 粘度の高いローションの瓶だ。
 センスのいい模様の入ったそのアクリル瓶を見た瞬間、阿紫花は改めてぞっとした。本気だ。
「入るかどうか、分からないからな。だがまあ、入れるのは出来る。お前が壊れるかも知れんが、知った事ではない」
 軽い音がして、蓋が外れる。
 再び右足首を掴まれ、阿紫花は吐き気を覚えた。やめろ、とも言えない。言っても無駄だし、--何をされるのか、見当がついている。
 怯えにも取れる表情で固まる阿紫花に、膝を割り身を入り込ませたジョージが顔を上げる。
「……イヤか」
「イヤだ。あ--あたし、それだけはイヤだ」
「……」
「女にだってさせた事、ねえ。い、イヤだ。イヤ」
 一度はっきり声に出すと、零れ落ちるように本音が出てくる。
「なんで、こんな事すんだ。イヤだ。あ、あたし--」
 イヤ、と繰り返す阿紫花に、
「……もう遅い」
 ジョージはローションの瓶を傾けた。
 粘度の高い液体が、両足の間を濡らしていく。
「……っ」
「近づき過ぎたんだ」
 ジョージの呟きに、「一体何が」、と思った瞬間。
 長く太い指がそこへ入り込んできて、阿紫花は不随意に嚥下した。
 固唾と、そしておそらくはジョージの唾液の混ざった自分の血を。


 続きます。(終わらなかった
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