平馬って分かってなさそう。田舎の5年生ってこんなもんですか。
リアルな下ネタです。ホントすいません。子持ちの女性と話してて思いついた。
平和な世界がやってきて。阿紫花たちが生き残ってるからパラレル。
ジョージと勝で阿紫花家のみんなと。
BGM :『うさ/ぎD/AS/H』『jack』 / →Pi/a-no/-j/aC←
リアルな下ネタです。ホントすいません。子持ちの女性と話してて思いついた。
平和な世界がやってきて。阿紫花たちが生き残ってるからパラレル。
ジョージと勝で阿紫花家のみんなと。
BGM :『うさ/ぎD/AS/H』『jack』 / →Pi/a-no/-j/aC←
騒がしき我が家
勝たちと一緒に、黒賀村へ里帰りしました。
「……英兄って、いつもジョージ連れてくるのね……言わなくていいわよ、見当ついてるから」
菊は高校生になり、人の機微にも通じるようになり。
「いいんじゃない?ジョージちんマジメだし。大体女に興味薄い顔じゃん、英兄はさあ」
蓮華は相変わらずだし。
「私たちはいいけど、平馬もそうなっちゃったらどうすんの……」
百合はおかしな心配をし。
阿紫花三人娘は、障子の影から長兄を見つめている。
「なんでえ。薄気味悪ィ娘っコたちでやすね」
こっち来りゃいいじゃねえか、と阿紫花は言う。
「兄貴、お茶」
「へえへ……」
縁側で、阿紫花は膝の上に平馬を乗せて寛いでいる。久しぶりなのですっかり甘える平馬に、阿紫花もつい甘くなり、お茶が欲しいと言われれば冷えた麦茶を取ってやり、背中が痒いと言えば掻いてやり……。すっかり甘えさせている。
「平馬はいいね。優しいお兄さんがいて」
勝はその隣でにこにこと笑う。「鳴海兄ちゃんとは違う感じだけど」
「はは……あの兄さんは、優しいけど甘やかさねえお人でさ。優しいんですけどね、あたしみたいに、年に何回も逢わねえからって甘やかすタイプたぁ違ぇでしょうね」
阿紫花と弟妹たちは親子と言ってもいいほど年齢が離れている。つい甘くもなるだろう。
本来なら平馬ではなく自分の子どもを膝に乗せていてもおかしくない。
「菊、蓮華、百合、……あんたらもこっち来たらどうなんでさ。なんでえ、さっきから、薄気味悪ィなあ」
阿紫花は振り向く。三姉妹は、何故かジョージを見ている。
ジョージは立ち上がりかけ、
「……なんなら、私は出てくるが」
「ああ、いいんでさ。なんでアナタが気を遣う必要がありまさ。まったくもう……これだからオボコどもは困らあ」
「オボコ」と評され、菊は真っ赤になり、蓮華はバツの悪い顔をし、百合は首を傾げる。
それぞれの反応に阿紫花はニヤリと笑みを浮かべ、
「……スイカでもあったら、切ってきてくんな」
三姉妹は我勝ちに台所へ走る。ドンガラガッシャーン、とザルを倒した音がして、「菊姉落ち着いて!」という百合の大声がした。
「どうしたの?みんな、慌てて……」
勝は不思議そうだ。
阿紫花は平馬を膝に乗せたまま微笑み、
「なに、慣れねえんでしょ、いきなりデカブツ連れて帰ってきちまったからなあ……」
「私の事か」
ジョージだ。
「アンタ以外にいやすか?--坊ちゃんだって、もうちっと大きくなって、例えばしろがね--エレオノールの嬢ちゃんみてえなのが、急にサーカス団に加わったら、緊張すんでしょ?ま、ジョージは別にあんな綺麗どころでもねえが」
「ううん……」
勝は思案する。「かもね……」
「そいつは慣れてねえからさ。あたし以外にゃオヤジさんしかこの家にいなかったもんなあ。いきなりでかい男が家に来たら、そりゃ娘っコは戸惑うわな。……」
「イシキするって事?」
平馬が生意気な声で上目遣いに問う。「こないだテレビで言ってた。色恋の始まりは、『イシキ』なんだって」
「……ちと違ェが、ま、近ェな。坊ちゃんも平馬も、もちっと大きくなったら分かりやすよ。--ねえジョージ」
「なぜ私に振る……」
ジョージは睨むように阿紫花を見る。
阿紫花はひらひらと手を振り、
「だってアンタ大人だろ」
「ああそういう意味……」
ほっと安堵したジョージに、阿紫花は、
「それにあたしのいい人じゃねえか」
「!!」
固まったジョージ。
勝も、「聞かなかった。僕何も聞かなかった」と、固まっている。
「ふ~ん……銀髪の兄ちゃん、兄貴のモンなの?」
平馬はさして不思議そうでもない。羽佐間みたいな舎弟だと思っているのかもしれない。
「ナイショでやすよ?平馬」
「うん。男と男の約束な」
兄と弟は固い契りを交わしているようではあるが。
(菊姉、ビンゴ)
(れ、蓮華の勘って当たりますのね……)
(つか、あたしは百合にも聞かせたくないわ、英兄のタワゴト)
障子の陰で、三姉妹は切ったスイカを載せたお盆を手に、固まっていた。
平馬がふと、
「……つうかさあ、英兄ィ?」
「へえ」
「映画とかドラマで、よく『愛を誓います』ってやるじゃん」
「そこに触れるな!」という三姉妹と勝の心の叫びに、平馬は気づかない。
「あれって、どういう意味?結婚式って、なんでやるの?」
「なんでって……そら、普通は結婚したら、一緒に暮らしたり、子ども作ったりって言う、人によったら墓穴堀りてな--」
「掘るな掘るな」という全員の心のツッコミは置いといて。
「こないだ俺、オヤジに似てないって、どっかのオバサンに言われてさ。母ちゃんは笑ってたけど」
「……。平馬ァ、あたしら血ィ繋がってねえんだから、そりゃあ--」
珍しくやるせなく阿紫花は言ったが、平馬は首をかしげ、
「なんで子どもって父ちゃんにも似る、ってみんな言うんだ?生むの母ちゃんだろ?おかしくない?」
「……?」
「だからあ、子ども作るのに、父ちゃんって、何すんの?」
その時の阿紫花の顔が。
パンタローネに初めて会った時よりもシビアだった事に、ジョージだけが気づいていた。
汗が一筋伝う顔で、阿紫花は問う。
「へ、平馬アンタ……来年六年生だっけ?」
「うん」
阿紫花は固まっている。六年生。普通なら分かるだろう。
現に勝は、阿紫花が探るように見ると、赤い顔で目を伏せた。絶対分かっている。
いや、勝は記憶をダウンロードさせられかけたし、祖父の記憶も読んでいるから、そういう面で現実を知っていてもおかしくない。大人びた子どもだし。
問題は平馬だ。
「おかしいよなー、俺は貰われてきたから違うけど、ヒロシのトコもさあ、ヒロシが父ちゃんに似てるんだって、みんな言うんだ」
そりゃ似るさ。羽佐間の子が阿紫花に似てたら大問題だ。
「生むの母ちゃんだろ?なんで似るんだ?一緒に住んでるからなのか?でも一緒に住んでても、俺と兄ちゃん似てないし……兄ちゃんがいけないのか?家出てくから。ずっと一緒にいたら、似てくんのか?」
「へ、平馬……アンタ、動物の交尾、見た事ねえか?」
それはいささか直球では……と、皆内心で思った。
しかし平馬は、
「見るよ。五郎んちの牛とかたまに種付けしてるじゃん」
ぶば、と噴出す音がした。ジョージだ。お茶を噴出してしまったらしい。「き、気にしないでくれ」と繕っている。
「犬だろー、猫だろー、あ、こないだスズメでも見た」
「じゃあ分かンだろ……」
「動物だけだろ?交尾って」
「……」
「だって結婚式とかって人間はするじゃん。あれすると出来るんの?愛を誓います、って言い合うと、出来ンの?動物は交尾で出来るんだろ?」
人間同士の交尾を見た事も考えた事も無いのか。人間も動物も同じだと、誰も教えてやらないのか。
「へ、平馬、いいかよ?なんで男には立派なサオ付いてて、女にゃ無ェ。学校じゃ教わらなかったのかい?」
「あ?学校?やったっけ?俺ずっと人形弄りの事ばっか考えてて」
学校の勉強くれえやりなせえ!と叱れないヤクザな兄は、青い顔で勝に助けを求める視線を送る。
勝は困惑気味の笑みを浮かべ、目をそらすばかりだ。
ジョージはダメだ。めしべとおしべという次元でものを言いそうに無い。
「なあ兄ちゃん、なんで?なんで子どもって父親に似ンの?一緒に住んでたら似ンの?ならどうして俺と兄ちゃん、似てねえの?」
弟の素直な言葉に阿紫花は。
さきほどよりもシビアな顔になって固まった。
「菊姉、……教えてやったら?平馬に」
「わ、私そんな、せ、性教育なんて無理よ!蓮華おやりなさいよ!初体験は終わったって言ってたじゃない!」
「そりゃ、あたし大学生と付き合ってたから、それなりに--でもヤだよ!」
「ええ、そうだったの!?蓮華姉、実はそうだったの?」
三姉妹は言い合っている。
勝は気づき(もっと小さな声でやってよね--)と苦笑いをするばかりだ。
「ねえ兄ちゃん、教えてくれよ~!百合姉たちも、母ちゃんたちも教えてくれねえんだよ」
「……(どうしやしょ)あんなぁ、平馬……アンタ、チンチン固くなったりしねえのかい」
「する。なるなる。勝もなるかあ?」
平馬に問われて勝は真っ赤な顔だ。
「な……な、なる、よ」
友情に答えるべき羞恥に耐える姿は涙ぐましくさえある。
阿紫花とジョージ(と隠れている三姉妹)は「頑張った!」と言ってやりたくなっている。
「なったら、意味あんの?触ると気持ちいいって、前に五郎が言ってたけど、そうなのか?」
「後でその五郎ってガキはぶっ殺すとして--ああもう、面倒臭ェ。平馬、女の身体見ると、勃たねえか?男でも兄ちゃんは何も言わねえけど」
「そこは譲歩するな」という全員の心のツッコミ。
阿紫花は続けて、
「いいですかい?女にゃ、赤ん坊生むためのアナがあるんでさ。そこに男のアレ入れると、子どもが出来るって寸法さ」
「? 知ってるよ」
「? 何が分からねえんだよ、テメエは」
「だからあ、それやって、どうなるのさ。なんで似るんだよ、父親に」
「?」
あ、と。
勝は気づく。横から声を掛けた。
「平馬……もしかして、出したこと無い?」
「何を?」
「ち、チンチンの先から……その、白いの」
「牛乳でも出るのか?」
あああ--と、平馬以外の全員が心の中で嘆息した。
平馬は、自分ではまだ経験した事がないから、分からないのだ。
説明しづらい。同じ年齢の子ども同士で教えあう内容ではない。
全員が困っていた。
その時不意に。
「--愛の力だ」
ジョージだ。咳払いをする。
「愛?」
平馬は首を傾げる。
「子どもが親に似るのも、愛だ。愛が無ければ、子どもは出来ない」
(うわあ、言い切ったよこの外人さんは)と、黒賀村の生粋の日本娘は青くなる。外国人が歯の浮くような科白を吐くのは、映画の中だけだと思っていた。
「愛--って、じゃあ、似てない親子は愛が無ェの?」
「他の人には分からないだけで、本当は似ているんだろう。君たちも、家族も、みんな似ていると思う。私は」
「ふーん……」
平馬は何か頷く所があったのか、大人しくなっている。
「ジョージ。……グッジョブ」
阿紫花が親指を立てる。ジョージは無視した。
「ねえねえ、兄ちゃん」
「ん?なんでさ、平馬」
「じゃあ、兄ちゃんとジョージって、なんで似てんの?兄弟?」
「は?似てやせんよ。冗談じゃねえ。こんなオデコの堅物」
ジョージも負けていない。
「そうだ。こんな金金うるさいだらしないだけの男、この私に似るはずが無い」
「言いやしたね、ジョージ。ケッ、そのだらしない男を毎回連れ出しに、世界の裏側まで来やがるのはどこのどちら様でさあ」
「ああ、本当にだらしないよな。久しぶりに会うのに髭は剃らない髪は整えない、小汚い浮浪者みたいな格好で空港まで来る度胸のいいバカが。我ながら、どうしてこんな……」
思い出して怒りがぶり返すジョージに、阿紫花は言い返す。
「小汚ェだあ?ジョージ、ワイルドってヤツが分からねえんじゃ、男じゃねえよ。ああ、ピアノ馬鹿のインテリお坊ちゃんにゃあ、分からねえか」
「ピアノ馬鹿?何を言うか。いいか、ピアノは……」
「坊ちゃん、平馬、このトーヘンボクはね、何週間ぶりかで顔合わせたって、手元にピアノがあればふらふら、そっちに直行しやがるピアノオタクなんですぜ。変態じゃねえか、一ヶ月ぶりに逢うのにピアノ聴かされるんですぜ?あたしの鍵盤(以下、放送事故的自粛)やがれってんだ」
「何!?ピアノとお前は違うだろ!」
「違ェから怒ってんでしょーが!」
ドラムとビーストの如く睨み合う二人に、平馬と勝は。
「……付き合ってんの?」
「遅いよ……平馬……」
子どもらしくなく項垂れた。
「……お、お待ちどう様です……」
どうぞ召し上がれ、と菊や百合はスイカを載せたお盆を縁側に置いてくれるのだが。
動きがぎこちない。
無理も無い。ずっと聞いていたのだ。
勝は今夜の阿紫花家の夕食の会話が気になって仕方が無い。
平馬は何気ない口調で、
「菊姉、知ってた?ジョージは英兄の……」
「平馬ちんスイカ美味しいよ!」
蓮華は平馬の口にスイカを押し込み、「細かい事は気にしない!」
目を白黒させる平馬を抱いたまま、阿紫花はスイカを受け取る。
「へえ、どうもありがとさん。ああ、うめえや」
普通に庭に種を飛ばしている。
先ほどまでの怒りはもう忘れたらしい。
「百合もやれや。あんた、結構遠くまで飛ばせたじゃねえか」
「もうしないわよ!」
「英兄はそんなんばっかだよね~。雪降ったら平馬と一緒にオシッコ飛ばしあって菊姉に怒鳴られたりさ」
「食べてるんだから!下品な事言わないでよ!」
「あ~あ~、ちっけえ頃はみんな可愛かったのによォ。今じゃでけえばっかで小うるせえばっかじゃねえか」
「英兄ィ!!」
「へえへえ!いちいち声揃えて高ぇ声で怒鳴んなって……あたし肩身が狭ぇぜ、平馬……あら?平馬?咽喉にスイカ詰まらせ--」
「やだっ!バケツ持ってきて!」
「運んだ方早いよ!トイレ!吐かせないと!」
「平馬ちんゴメン!ああ、どうしよ!」
「ああもう、いいから任せな!ったくよお、お前ら退屈しねえよまったくよ」
どたどたと、阿紫花や妹たちの足音が遠ざかっていく。
しばらくして「殺す気か!!」という平馬の声がした。
「……(僕どうしてこんな面白い状況でここにいるんだろう……)」
「……(勝は阿紫花家で居候していたのだっけ。こんな騒がしい家でよく……)」
勝とジョージはひたすら無言で咀嚼していた。
蜩の声が鳴き、勝は呟いた。
「……スイカ、美味しいね、ジョージさん。……」
「……ああ。……」
二人はただスイカを齧っていた。
END
勝たちと一緒に、黒賀村へ里帰りしました。
「……英兄って、いつもジョージ連れてくるのね……言わなくていいわよ、見当ついてるから」
菊は高校生になり、人の機微にも通じるようになり。
「いいんじゃない?ジョージちんマジメだし。大体女に興味薄い顔じゃん、英兄はさあ」
蓮華は相変わらずだし。
「私たちはいいけど、平馬もそうなっちゃったらどうすんの……」
百合はおかしな心配をし。
阿紫花三人娘は、障子の影から長兄を見つめている。
「なんでえ。薄気味悪ィ娘っコたちでやすね」
こっち来りゃいいじゃねえか、と阿紫花は言う。
「兄貴、お茶」
「へえへ……」
縁側で、阿紫花は膝の上に平馬を乗せて寛いでいる。久しぶりなのですっかり甘える平馬に、阿紫花もつい甘くなり、お茶が欲しいと言われれば冷えた麦茶を取ってやり、背中が痒いと言えば掻いてやり……。すっかり甘えさせている。
「平馬はいいね。優しいお兄さんがいて」
勝はその隣でにこにこと笑う。「鳴海兄ちゃんとは違う感じだけど」
「はは……あの兄さんは、優しいけど甘やかさねえお人でさ。優しいんですけどね、あたしみたいに、年に何回も逢わねえからって甘やかすタイプたぁ違ぇでしょうね」
阿紫花と弟妹たちは親子と言ってもいいほど年齢が離れている。つい甘くもなるだろう。
本来なら平馬ではなく自分の子どもを膝に乗せていてもおかしくない。
「菊、蓮華、百合、……あんたらもこっち来たらどうなんでさ。なんでえ、さっきから、薄気味悪ィなあ」
阿紫花は振り向く。三姉妹は、何故かジョージを見ている。
ジョージは立ち上がりかけ、
「……なんなら、私は出てくるが」
「ああ、いいんでさ。なんでアナタが気を遣う必要がありまさ。まったくもう……これだからオボコどもは困らあ」
「オボコ」と評され、菊は真っ赤になり、蓮華はバツの悪い顔をし、百合は首を傾げる。
それぞれの反応に阿紫花はニヤリと笑みを浮かべ、
「……スイカでもあったら、切ってきてくんな」
三姉妹は我勝ちに台所へ走る。ドンガラガッシャーン、とザルを倒した音がして、「菊姉落ち着いて!」という百合の大声がした。
「どうしたの?みんな、慌てて……」
勝は不思議そうだ。
阿紫花は平馬を膝に乗せたまま微笑み、
「なに、慣れねえんでしょ、いきなりデカブツ連れて帰ってきちまったからなあ……」
「私の事か」
ジョージだ。
「アンタ以外にいやすか?--坊ちゃんだって、もうちっと大きくなって、例えばしろがね--エレオノールの嬢ちゃんみてえなのが、急にサーカス団に加わったら、緊張すんでしょ?ま、ジョージは別にあんな綺麗どころでもねえが」
「ううん……」
勝は思案する。「かもね……」
「そいつは慣れてねえからさ。あたし以外にゃオヤジさんしかこの家にいなかったもんなあ。いきなりでかい男が家に来たら、そりゃ娘っコは戸惑うわな。……」
「イシキするって事?」
平馬が生意気な声で上目遣いに問う。「こないだテレビで言ってた。色恋の始まりは、『イシキ』なんだって」
「……ちと違ェが、ま、近ェな。坊ちゃんも平馬も、もちっと大きくなったら分かりやすよ。--ねえジョージ」
「なぜ私に振る……」
ジョージは睨むように阿紫花を見る。
阿紫花はひらひらと手を振り、
「だってアンタ大人だろ」
「ああそういう意味……」
ほっと安堵したジョージに、阿紫花は、
「それにあたしのいい人じゃねえか」
「!!」
固まったジョージ。
勝も、「聞かなかった。僕何も聞かなかった」と、固まっている。
「ふ~ん……銀髪の兄ちゃん、兄貴のモンなの?」
平馬はさして不思議そうでもない。羽佐間みたいな舎弟だと思っているのかもしれない。
「ナイショでやすよ?平馬」
「うん。男と男の約束な」
兄と弟は固い契りを交わしているようではあるが。
(菊姉、ビンゴ)
(れ、蓮華の勘って当たりますのね……)
(つか、あたしは百合にも聞かせたくないわ、英兄のタワゴト)
障子の陰で、三姉妹は切ったスイカを載せたお盆を手に、固まっていた。
平馬がふと、
「……つうかさあ、英兄ィ?」
「へえ」
「映画とかドラマで、よく『愛を誓います』ってやるじゃん」
「そこに触れるな!」という三姉妹と勝の心の叫びに、平馬は気づかない。
「あれって、どういう意味?結婚式って、なんでやるの?」
「なんでって……そら、普通は結婚したら、一緒に暮らしたり、子ども作ったりって言う、人によったら墓穴堀りてな--」
「掘るな掘るな」という全員の心のツッコミは置いといて。
「こないだ俺、オヤジに似てないって、どっかのオバサンに言われてさ。母ちゃんは笑ってたけど」
「……。平馬ァ、あたしら血ィ繋がってねえんだから、そりゃあ--」
珍しくやるせなく阿紫花は言ったが、平馬は首をかしげ、
「なんで子どもって父ちゃんにも似る、ってみんな言うんだ?生むの母ちゃんだろ?おかしくない?」
「……?」
「だからあ、子ども作るのに、父ちゃんって、何すんの?」
その時の阿紫花の顔が。
パンタローネに初めて会った時よりもシビアだった事に、ジョージだけが気づいていた。
汗が一筋伝う顔で、阿紫花は問う。
「へ、平馬アンタ……来年六年生だっけ?」
「うん」
阿紫花は固まっている。六年生。普通なら分かるだろう。
現に勝は、阿紫花が探るように見ると、赤い顔で目を伏せた。絶対分かっている。
いや、勝は記憶をダウンロードさせられかけたし、祖父の記憶も読んでいるから、そういう面で現実を知っていてもおかしくない。大人びた子どもだし。
問題は平馬だ。
「おかしいよなー、俺は貰われてきたから違うけど、ヒロシのトコもさあ、ヒロシが父ちゃんに似てるんだって、みんな言うんだ」
そりゃ似るさ。羽佐間の子が阿紫花に似てたら大問題だ。
「生むの母ちゃんだろ?なんで似るんだ?一緒に住んでるからなのか?でも一緒に住んでても、俺と兄ちゃん似てないし……兄ちゃんがいけないのか?家出てくから。ずっと一緒にいたら、似てくんのか?」
「へ、平馬……アンタ、動物の交尾、見た事ねえか?」
それはいささか直球では……と、皆内心で思った。
しかし平馬は、
「見るよ。五郎んちの牛とかたまに種付けしてるじゃん」
ぶば、と噴出す音がした。ジョージだ。お茶を噴出してしまったらしい。「き、気にしないでくれ」と繕っている。
「犬だろー、猫だろー、あ、こないだスズメでも見た」
「じゃあ分かンだろ……」
「動物だけだろ?交尾って」
「……」
「だって結婚式とかって人間はするじゃん。あれすると出来るんの?愛を誓います、って言い合うと、出来ンの?動物は交尾で出来るんだろ?」
人間同士の交尾を見た事も考えた事も無いのか。人間も動物も同じだと、誰も教えてやらないのか。
「へ、平馬、いいかよ?なんで男には立派なサオ付いてて、女にゃ無ェ。学校じゃ教わらなかったのかい?」
「あ?学校?やったっけ?俺ずっと人形弄りの事ばっか考えてて」
学校の勉強くれえやりなせえ!と叱れないヤクザな兄は、青い顔で勝に助けを求める視線を送る。
勝は困惑気味の笑みを浮かべ、目をそらすばかりだ。
ジョージはダメだ。めしべとおしべという次元でものを言いそうに無い。
「なあ兄ちゃん、なんで?なんで子どもって父親に似ンの?一緒に住んでたら似ンの?ならどうして俺と兄ちゃん、似てねえの?」
弟の素直な言葉に阿紫花は。
さきほどよりもシビアな顔になって固まった。
「菊姉、……教えてやったら?平馬に」
「わ、私そんな、せ、性教育なんて無理よ!蓮華おやりなさいよ!初体験は終わったって言ってたじゃない!」
「そりゃ、あたし大学生と付き合ってたから、それなりに--でもヤだよ!」
「ええ、そうだったの!?蓮華姉、実はそうだったの?」
三姉妹は言い合っている。
勝は気づき(もっと小さな声でやってよね--)と苦笑いをするばかりだ。
「ねえ兄ちゃん、教えてくれよ~!百合姉たちも、母ちゃんたちも教えてくれねえんだよ」
「……(どうしやしょ)あんなぁ、平馬……アンタ、チンチン固くなったりしねえのかい」
「する。なるなる。勝もなるかあ?」
平馬に問われて勝は真っ赤な顔だ。
「な……な、なる、よ」
友情に答えるべき羞恥に耐える姿は涙ぐましくさえある。
阿紫花とジョージ(と隠れている三姉妹)は「頑張った!」と言ってやりたくなっている。
「なったら、意味あんの?触ると気持ちいいって、前に五郎が言ってたけど、そうなのか?」
「後でその五郎ってガキはぶっ殺すとして--ああもう、面倒臭ェ。平馬、女の身体見ると、勃たねえか?男でも兄ちゃんは何も言わねえけど」
「そこは譲歩するな」という全員の心のツッコミ。
阿紫花は続けて、
「いいですかい?女にゃ、赤ん坊生むためのアナがあるんでさ。そこに男のアレ入れると、子どもが出来るって寸法さ」
「? 知ってるよ」
「? 何が分からねえんだよ、テメエは」
「だからあ、それやって、どうなるのさ。なんで似るんだよ、父親に」
「?」
あ、と。
勝は気づく。横から声を掛けた。
「平馬……もしかして、出したこと無い?」
「何を?」
「ち、チンチンの先から……その、白いの」
「牛乳でも出るのか?」
あああ--と、平馬以外の全員が心の中で嘆息した。
平馬は、自分ではまだ経験した事がないから、分からないのだ。
説明しづらい。同じ年齢の子ども同士で教えあう内容ではない。
全員が困っていた。
その時不意に。
「--愛の力だ」
ジョージだ。咳払いをする。
「愛?」
平馬は首を傾げる。
「子どもが親に似るのも、愛だ。愛が無ければ、子どもは出来ない」
(うわあ、言い切ったよこの外人さんは)と、黒賀村の生粋の日本娘は青くなる。外国人が歯の浮くような科白を吐くのは、映画の中だけだと思っていた。
「愛--って、じゃあ、似てない親子は愛が無ェの?」
「他の人には分からないだけで、本当は似ているんだろう。君たちも、家族も、みんな似ていると思う。私は」
「ふーん……」
平馬は何か頷く所があったのか、大人しくなっている。
「ジョージ。……グッジョブ」
阿紫花が親指を立てる。ジョージは無視した。
「ねえねえ、兄ちゃん」
「ん?なんでさ、平馬」
「じゃあ、兄ちゃんとジョージって、なんで似てんの?兄弟?」
「は?似てやせんよ。冗談じゃねえ。こんなオデコの堅物」
ジョージも負けていない。
「そうだ。こんな金金うるさいだらしないだけの男、この私に似るはずが無い」
「言いやしたね、ジョージ。ケッ、そのだらしない男を毎回連れ出しに、世界の裏側まで来やがるのはどこのどちら様でさあ」
「ああ、本当にだらしないよな。久しぶりに会うのに髭は剃らない髪は整えない、小汚い浮浪者みたいな格好で空港まで来る度胸のいいバカが。我ながら、どうしてこんな……」
思い出して怒りがぶり返すジョージに、阿紫花は言い返す。
「小汚ェだあ?ジョージ、ワイルドってヤツが分からねえんじゃ、男じゃねえよ。ああ、ピアノ馬鹿のインテリお坊ちゃんにゃあ、分からねえか」
「ピアノ馬鹿?何を言うか。いいか、ピアノは……」
「坊ちゃん、平馬、このトーヘンボクはね、何週間ぶりかで顔合わせたって、手元にピアノがあればふらふら、そっちに直行しやがるピアノオタクなんですぜ。変態じゃねえか、一ヶ月ぶりに逢うのにピアノ聴かされるんですぜ?あたしの鍵盤(以下、放送事故的自粛)やがれってんだ」
「何!?ピアノとお前は違うだろ!」
「違ェから怒ってんでしょーが!」
ドラムとビーストの如く睨み合う二人に、平馬と勝は。
「……付き合ってんの?」
「遅いよ……平馬……」
子どもらしくなく項垂れた。
「……お、お待ちどう様です……」
どうぞ召し上がれ、と菊や百合はスイカを載せたお盆を縁側に置いてくれるのだが。
動きがぎこちない。
無理も無い。ずっと聞いていたのだ。
勝は今夜の阿紫花家の夕食の会話が気になって仕方が無い。
平馬は何気ない口調で、
「菊姉、知ってた?ジョージは英兄の……」
「平馬ちんスイカ美味しいよ!」
蓮華は平馬の口にスイカを押し込み、「細かい事は気にしない!」
目を白黒させる平馬を抱いたまま、阿紫花はスイカを受け取る。
「へえ、どうもありがとさん。ああ、うめえや」
普通に庭に種を飛ばしている。
先ほどまでの怒りはもう忘れたらしい。
「百合もやれや。あんた、結構遠くまで飛ばせたじゃねえか」
「もうしないわよ!」
「英兄はそんなんばっかだよね~。雪降ったら平馬と一緒にオシッコ飛ばしあって菊姉に怒鳴られたりさ」
「食べてるんだから!下品な事言わないでよ!」
「あ~あ~、ちっけえ頃はみんな可愛かったのによォ。今じゃでけえばっかで小うるせえばっかじゃねえか」
「英兄ィ!!」
「へえへえ!いちいち声揃えて高ぇ声で怒鳴んなって……あたし肩身が狭ぇぜ、平馬……あら?平馬?咽喉にスイカ詰まらせ--」
「やだっ!バケツ持ってきて!」
「運んだ方早いよ!トイレ!吐かせないと!」
「平馬ちんゴメン!ああ、どうしよ!」
「ああもう、いいから任せな!ったくよお、お前ら退屈しねえよまったくよ」
どたどたと、阿紫花や妹たちの足音が遠ざかっていく。
しばらくして「殺す気か!!」という平馬の声がした。
「……(僕どうしてこんな面白い状況でここにいるんだろう……)」
「……(勝は阿紫花家で居候していたのだっけ。こんな騒がしい家でよく……)」
勝とジョージはひたすら無言で咀嚼していた。
蜩の声が鳴き、勝は呟いた。
「……スイカ、美味しいね、ジョージさん。……」
「……ああ。……」
二人はただスイカを齧っていた。
END
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機械仕掛けの林檎
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プロフィール
名前:デラ
性別:女性(未婚)
年齢:四捨五入して三十路
備考:体力と免疫力が無い
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