印刷 高速道路 1000円 機械仕掛けの林檎 ある日の悪戯 (カテゴリ:短編 ジョ阿紫) 忍者ブログ
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 コメディ。いろいろやってますので、露骨な性表現が苦手な方は閲覧されませんようお願いいたします。
 
 デスクワークのジョージに阿紫花が悪戯。
 コミックス持ってないので時間軸がちょっと分からないのですが……サハラ後って、ギィとジョージと阿紫花と鳴海とミンシアでフウの屋敷にいたのでしたっけ?ううむ、間違っていそう。
 感動したものは大概記憶しておきたいけど、二次作品を書くなら手近に置くべきですよね……。


 BGM : →P/ia-n/o-jaC←
 ピアノが最高。一度聴いてみてください。ジョージがもし弾くなら、クラシックより、こういうアレンジ効いた曲が似合いそう。オススメは「台風」。合いの手の男の声が素敵です。阿紫花とタッグ組んでるジョージのシーンってこんなかしら?笑
 他の曲もイイ。スッゴク感じる。素敵。

 ……名曲でエロ書いてばっかですいません。アーティストの方々には本当に申し訳ないです。

 ある日の悪戯

「すまないが、ジョージ、仕事を頼まれてくれないか」
 フウはある日そう言った。
 よく晴れた午前の、屋敷の一室である。
「しろがねとしてのフェイスレスが残した痕跡を、いろいろ集めているのだよ。今後のために纏めておきたい。何か役に立つかもしれない。人形にさせてもいいんだが、君の主観も欲しいかと思ってね」
 フウは苦笑し、
「君を裏切った男の痕跡を辿らせるのは、正直心苦しいんだがね。Oである君が、一番適任だろうと思う。今いるメンバーの中では、一番ヤツに近かったワケだから。ギィには断られたし、阿紫花には頼めない。彼はしろがねの事など、全然知らないからね」
「……ああ」
 にこりともせずにジョージが頷く。「分かった」
「パソコンは使えるね?愚問だったかね。失礼--急ぐ仕事ではない。君の好きにやってくれ」
 フウはかすかに微笑み、
「一度、すべて目を通してみてくれたまえ。ジョージ」
 そう言った。

 暇人と思われた。そういう事なのだろう。
 ジョージは長い髪を纏め、椅子に腰を下ろした。
 目の前のマホガミーのデスクの上には、ジョージですら一度に運びきれないような紙の束が載っている。すべて報告書だ。インターネットでアングラに流れるニュースから、某大国の衛星から撮影した真夜中のサーカス団の映像まで。
 恐ろしく膨大な資料、しかも使用している言語がばらばらだ。なるほど、しろがねや-Oが適任なのは一目で分かった。少なくとも、言語の問題はないのだから。
 ジョージに与えられた執務室に置いてあるパソコンは、そのまま屋敷の管理コンピュータの一部に直結しているらしい。端末からのアクセスを、比較的容易に受け入れる設定にしてくれていたようだ。パソコンを立ち上げるとすぐに屋敷の管理コンピュータに接続され、フウ・インダクトリー専用のOS画面が映る。
 教えられていたパスワードを入力する。しばらく待った。認証に時間がかかる。
 頬杖をついて待っていたが、ふと視界にメガネが映った。フウの私物だろうか。手に取ると、度は入っていないと分かった。眼精疲労や電磁波の防止に使うメガネのようだ。
 人形しかいない屋敷の中で、フウしか使うものはいないだろう。だがフウはこの端末は使わない。あくまでゲスト用なのか。つくづく手入れの行き届いた屋敷だ。
 ジョージはサングラスを外し、メガネをかけた。別に眼精疲労も電磁波も、しろがね-Oには影響しない。だが使われるのを待っているだけのメガネだ。使ってやろうという気になった。
 レンズ越しの視界でパソコンの液晶を眺めた時、薄く開けたままのドアの近くに人間が見えた。
 阿紫花だ。珍しくベストを着ている。それに服の仕立てが違う。コートの袖をまくるような着こなしをする彼にしては、随分と品がいい。
 室内にジョージの姿を認め、阿紫花は猫が隙間から入ってくるようにするりと入ってきた。
「ジョージさん、何してんでさ」
「見ての通りだ。邪魔するな。……」
「まだ何もしてねえじゃねえか」
 阿紫花は口を尖らせて近づいてくる。
「えーと……『アフリカ・サハラ西域で確認された大型銃火器を装備した未確認の人型兵器に関する報告書』……」
 比較的流暢な英語で口にしてから、阿紫花は「ダメだ、意味が分からねえ」と言った。
「だから邪魔するな」
「でもこれ、アンタの前の親分でやしょ」
 阿紫花は手近にあった一枚を掲げる。フェイスレスの顔の衛星写真だ。
「コレ関係?」
「……ああ。フウに頼まれた」
 ジョージの言葉に阿紫花は鼻を鳴らし、
「アンタ昨日今日までへこんでたじゃねえですか。なんでフウのじいさんに言われたからって、素直にやりますかねえ。断りゃいいじゃねえかよ。ホントはイヤだ、って顔に書いてまさあね、ジョージ」
「……別に」
「……アンタ、結構人からイヤな仕事押し付けられるタイプでしょ。断る理由探すタイプさ。そんなの一言『イヤだ』って蹴っちまえばいいのに……」
 「お人好しでやすねえ」と言いながら阿紫花はタバコに火をつける。灰皿がない。窓辺にあった蘭の鉢植えの水皿に灰を落とした。
「邪魔はしやせんよ、見てるだけ。……へへ……」
「なんだ」
「メガネ、似合うじゃねえですか」
 ニヤニヤと阿紫花は笑っている。
 ジョージは一瞬目をやり、すぐにパソコンに戻した。

 それからしばらくは、二人とも無言だった。
 阿紫花はタバコを吸いながらソファに寝転がっている。ドレープのレースのカーテンが添えられた大窓からは青空しか見えないだろうに、飽きもせず見上げている。
 阿紫花が静かなおかげで、ジョージは仕事に集中出来た。
 ひたすら分類と分析を繰り返す作業だ。どちらかと言えば楽だが、--時折、傷口を抉られるような気分がした。
 -Oのデータ。
 各個体の改良手術の記録。
 まるで、「より強い者を作る実験」のように、段階を追って。
 --私はとっくに旧式、か。
 ジョージは小さく嘆息する。
 分かっていたつもりでも、情報の束を見せ付けられると、苦しい。
 だが仕方がない。仕方が、ないのだ。もう戻れない。
(……しろがねになった時から、それは同じか)
 いやもっと前?もっと、ゾナハ病に罹患する前?
(……感傷など)
 今更必要ない。

 詳細なデータの閲覧と入力を繰り返す内に、どうも深い場所まで潜り込んでしまったらしい。「アクセス権限のない領域です」という警告が現れる。屋敷のコンピュータ経由でフウ・インダクトリーの巨大コンピュータの深部にアタックしたらしい。
 特定のポイントからの巨大コンピュータへの不正な外部アクセスの痕跡を辿っていたのだが、自分も深く入り込みすぎたらしい。
 やっている事がクラッカーと変わらなくなる前に引き返すべきか?……やっと面白くなってきたのに、とジョージは心の中で呟く。
 アクセスポイントを増やして地球を三周くらいしてアクセスするか。それとも一度どこかの軍を経由するか。何でもいいが、使っている端末では耐えられる気がしない。単純にアタックをかけて解読すればいいという話なのだが……。
 フウのコンピュータだから、フウに言えばきっと暗号など解読せずともアクセスコードを教えてくれるだろう。しかし。
(確かに、私は理由を探すタイプだな)
 「アンタ、結構人からイヤな仕事押し付けられるタイプでしょ」と言った阿紫花の言葉を思い出す。
 これだって別に強制ではなかった。頼まれたからやっているだけだ。不愉快でも、苦痛でも、断る理由がなかったからだ。
 だがそれも、退屈な話だ。
(……フン、フウめ。後で慌てるだろうか)
 内部--つまりジョージからの不正アクセスの痕跡が見つかったら、仕事を頼んでいたフウは慌てるだろうか?
 痕跡など残さない自信はある。だが少しだけ、残してやるのがいいのだ。気づけばいい。ささやかな悪戯だ。

 立ち上がり長い上着を脱ぎ始めたジョージに、阿紫花は首をめぐらせた。
「ジョージさん、なんで脱いでるんで?」
 脱いだコートを適当に椅子の背に掛け、ジョージは左腕の袖を肩口近くまで捲り上げる。
 白い筋肉質な腕が見え、阿紫花が立ち上がり近づいてくる。
 それに見向きもせず、ジョージは二の腕の内側から、何かを引き出した。黒いコードだ。
 ジョージはコードの先端に何か嵌め込み、それをハードディスクの隅に接続した。
「何を……」
 後ろからそれを覗き込み、阿紫花は言った。「何すんでさ」
 画面の上では暗号解読のためのバイナリエディタがさかんに動き回っている。
「……フウへの、悪戯だ」
「悪戯ァ?」
「確かに、いささか不快になったからな。……」
「……で、何すンでさ」
「解読して、入り込んで、フルコントロール権限を借りる」
「……で、何すンでさ」
「何も。見たいデータを見て、出て行くだけだ。入り込んだ痕跡を誰かが見つけて騒ぐだけ。見つかればの話だが」
「……それが、悪戯?」
「ああ。無意味だろう?悪戯だからな」
「……小難しい意趣返しでやすねえ」
「下らないだけだ。こんなもの。だから悪戯だと言っているだろう」
 ふと気づいたように、ジョージは腕で足を持ち上げ姿勢を正した。
「私の身体の両足とボラの制御システムを、一時的に停止させた。停止したシステム分の容量と機能を、この端末の補助に使っている。この端末ではいささかパワー不足だからな」
 ジョージはドアに目をやり、
「忘れていた。接続している間は、足が動かせない。閉めてきてくれ。見つかると、コトだ」
 と言った。そのまま画面に集中する。
 だが。
「……おい」
「へえ」
「どうして机の下に入り込む」
 阿紫花が、机の下のジョージの足元に跪いている。
 大きなデスクだから、余裕はあるだろうが窮屈に変わりはない。
「何を考えて……」
「あたしも、悪戯してえ気分なんでさ。足、動かねえだけでしょ?」
 阿紫花が、ジョージのズボンのファスナーに手をかける。
 ジョージは慌てた。
「ドアが開いている。見つかったら--」
「でえじょうぶでさ。ここは角部屋で人通りなんかほとんどねえ。それに見っかったってメイド人形だ。お人形さんに見られたって、なんてこたねえよ」
 幸い、デスクは完全に箱のような形をしているから、廊下からは見えない。
 しかしそれでも、誰か来たらどうするのだ。
「今更……大した事かい?あたしが思うにね、フウのじいさんはもっとえげつねえ場面だって見た事あるお人でさ」
「……」
「しろがねったって、ついてるモンは人間と一緒なんですもんねえ。……案外、見て楽しんでるかも知れやせんぜ。……」
 言いながら、口に咥えたファスナーを下ろしていく。
 ズボンの前を開け、下着をずらし、それを取り出す。
 阿紫花の舌が先端に触れた、
「阿紫花っ……」
「なんでさ?悪戯、そっちはそっちで続けなせえよ。……」
 画面が目まぐるしく切り替わる。すばやくやらなければ、気づかれて炎の壁で焼かれるだろう。
「……いいか、こんな事しても私は……出さないからな」
「へえへえ。耐えられっか、勝負といきやしょ」
 柔らかい口内に先端が含まれ、ジョージは息を呑む。
「口に、入り切んね……や。まだ勃ってねえってのに……」
 舌で溝を掘りながら、阿紫花は言う。
「ホント、こんなの……よく入ると、思いやすよ……。昨日も散々、……コレで、あたしの中、」
 しゃぶるように、先端を口に含んでは出す。
「掻き回して……、ココ、当たンでさ……。イイとこ、抉るみてえに……。は……、たまんねえ……」
 情景を思い起こさせるように、阿紫花は卑猥な言葉を吐く。
 視線をパソコンの画面に集中させ、ジョージは耐える。
 解読が終わり、一番外壁である暗号は解読できたようだ。
 すぐにその奥の暗号を解読し始めなくてはいけない。
 どの方法で暗号化しているのだろう?どの方法で解読できるだろう?――思考は纏まらないが、ジョージはキーを押した。こんな事になった以上、直接な方法で構わない。見つかる可能性は高いが確実な方法を取る。
「……耐えてんで?」
 阿紫花の声がした。
 勃ちが悪い。
「言っただろう。出さない」
「……そう言われっと、何でもしたくなンのが人情ってか……」
「無駄だ。私は-Oだぞ?」
 阿紫花もいい加減聞き飽きたであろう科白を、ジョージが吐いた時だった。

「ジョージ。進んでるかい?」
 ギィだ。外出用のコートを羽織っているから、出かけるのか、帰ってきたのか。
「ギィ!?」
「何を驚いているんだ?今さっき、フウに言われてね。追加だ。最新の報告だそうだ。紙じゃなくてUSBで持ってきた。良かっただろ?」
 ジョージは腕まくりを元に戻した。コードには気づかれていない。
「……ああ」
 ギィは机の向こうに立って資料を眺め、
「結構な量だな。それでも三割以上処理したのかい?君は案外、仕事が早いな」
「……それほどでも。……っ」
 急に強く吸われ、ジョージは目を見開く。
 音が出ないのが不思議なくらい、深く激しく吸われている。
「? どうした」
「いや、……今日の予定は?」
 ギィはコートの衿を正し、
「僕はこの後、街へ出て、ちょっとね。ああ、阿紫花を見なかったかい?」
 机の下で私のアレを吸っている--とは、言えない。
「いや……何か、したのか?」
「フウが以前に青年の執事人形を作ったそうなんだ。まあ、すぐに飽きてやめたそうなんだが、その時に着せた服が残っていた。阿紫花があまりにも安っぽい格好をしているからね。たまりかねたフウが、その服を着せてみた」
 それであの服か。道理で英国風の仕立てになっていると思った。
 ギィは顎に手をやり、
「人形なんて、大概やりすぎな程に均整を取って作っているのにな。袖丈とパンツの丈を直したくらいで、後はぴったりだった。フウが手を叩いて面白がってね。まるでペットに服を着せる飼い主さ」
「……フン」
「彼は鳴海も気に入ったらしいが、全然違う扱いだな。細身で黒髪の日本人形が、フウはいたく気に入ったらしい。阿紫花にはもったいないほど身奇麗にしたのはいいが、フウが着せ替えのように着替えばかりさせるから、阿紫花が逃げてしまった」
 それでこんな屋敷の隅に、阿紫花はやって来たのか。
 下半身への刺激に必死に耐えながらも、ジョージは納得する。
「どうも我々しろがねは、銀髪以外を見ると弄りたくようだね。そう思わないか、ジョージ」
 ギィめ、本当は気づいているのではないか?--余裕を失いつつあるジョージはそんな勘繰りをする。
 この綺麗なしろがねは、一癖も二癖もある男なのだ。
 当のギィは笑って、
「なんてね。同じ黒髪でも、鳴海なんか何を着せても似合わないがね。いやあ、君にも見せたかったなあ。阿紫花が、メイド人形の服を……」
「着たのか!?」
「……着せられそうになって、目を丸くしていたよ。カワイイ顔になるものだね。それで『悪ふざけはツラだけにしてくんな、フウさん』って逃げ出してね」
 ギィは口真似をする。似ていない。
「……バカだ……阿紫花もフウも」
「フウも悪ふざけが過ぎたと反省しているよ。阿紫花に謝りたいそうだ。それで今、メイド人形が屋敷中を探している。あの中国のお嬢さんも手伝ってくれているんだが、--ここにはまだ誰も来なかったみたいだな」
「あ、ああ……」
 ジョージはパソコンに注視する振りをする。クラッキング中だとバレてはいないが、それにしても間が悪い。阿紫花め。
「……」
 ギィは顎に触れていた指を曲げ、少し首をかしげた。
 何か気づいたのか?
 ギィはにっこりも微笑んだ。
「ここにはいないようだ。僕はロンドンへ出てくるから、帰りは遅くなるよ。ゆっくり『仕事』にいそしみたまえ」
「……ああ」
「ああ、今日は暖かいなあ!ドアを開けて行ってやるよ。いやあ、僕は本当に気が利く男だな」
 そんな事を言って、ドアを全開にしてギィは出て行った。

「……性悪め」
「なんでさ?ジョージさん。今更説教?」
 勃起した性器の先端を口に含み、阿紫花は上目遣いをする。
「へへ……勃ちやした」
「……」
 全開のドアの向こうで、時折メイド人形が顔を覗かせる。室内にジョージしかいない事を感知すると、すぐにどこかへ消える。熱感知は使っていないようだが、本気で探し回っているものでもないのだろう。家事の片手間に探しているだけらしい。寝具や家具、書類を運びながらジョージの顔を覗いていくメイドばかりだ。
「……イヤにモノを運ぶメイドが多いな」
「ああ、ここは角部屋だけど、向かいが管理室なんでさ」
「……」
「モニタールームは別にあンだが、もっと大本のコンピュータの管理室はここの向かいなんだとかなんだとか……。ちなみにそん隣は物品管理室だとかって。消耗品とか」
 日用品を運ぶメイドが多かったのはそのせいか。
「お前、さっき『ここは人通りが少ない』と……」
「あいつら人形だ。人じゃねえ」
 むしゃぶりつきながら、阿紫花は言う。
「人形なんかにゃ勿体ねえ……あたしのモンでさ。……」
 言いながら、阿紫花はベルトを外した。ズボンの前を寛げ、中に手をやる。「あたしも、勃ってら……」
 せっかくフウの揃えた上等なシャツもベストもズボンも、皺がよっている。阿紫花の、前を寛げて自らを扱き上げる動作に負け、ぐしゃぐしゃだ。
「あ、あたし……なんで感じてンですかね……アンタなんかのしゃぶって、テメエの竿しごいて……」
「……」
「せっかく……マシなスーツ着てんのに気づかねえ朴念仁なんかの……しゃぶって……興奮しまくって、……」
 舌の動きが早くなる。
 足が動けば腰を引きたくなるような快楽に、ジョージは息を呑む。
 いっそPC端末との接続を絶って、足とボラの制御を復活させるか。あそして阿紫花を止める。だがそれでは解読が進まない。物事を途中で辞めるのは、性に合わない。
 画面の中では、解読が進み続けている。コードを要求する画面に、機械的に入力した。上半身の制御システムは切っていない。だがもし普通の人間なら、下半身の熱に気を取られて、手が震えてしまうだろう。
 もう少しだ。もう少しで、辿り着く。
 HDDがフル稼働する音に混ざり、阿紫花の熱く潤んだ声が足元から聞こえる。
「そっち、進んでやす?……こっちも……イイ感じ……」
「……っ」
「ハ……、あたしも……ビンビンなってンでさ……ジョージ……。しゃぶらせるだけ、って……そりゃ……あんた、恨みやすよ……」
 自ら扱き上げる、その動作が早くなっている。
「欲しく、なってンのに……」
 潤んだ瞳と目が合う。
 その瞬間--。
「ジョージ、何してるの?」
 ミンシアの声がした。

「阿紫花見なかった?なんかフウさんが探してたわよ」
「し--知るか!」
 ジョージは思わず怒鳴っていた。悪気はない。だが焦りが頂点まで達しつつある。
 ミンシアはさすがに男所帯で育っただけあって、怒鳴り声などには怯まない。首をかしげ、
「やだ、何怒ってるの?顔赤いわよ、珍しい。……熱でもあるの?」
 と、心配して見せた。
 ジョージは目をそらす。バツが悪い。今だって下半身を阿紫花に弄られ続けている。もしこのうら若き美少女にそれがバレたら、周囲からどんな謗りを受けるか……考えるだに恐ろしい。
「……熱など。……すまない。怒鳴って……」
「……やっぱ変ねえ、ジョージ。なんか気弱ねえ。……何かあったの?何してるの、こんなにたくさんの書類……」
「フェイスレスの、洗い直しだ」
「まあ……」
 ミンシアは机の横に回りこんでくる。
 ジョージは青ざめたが、ミンシアは気づかない。
「昨日今日で、ジョージ……辛くない?」
 辛い。非常に。ミンシアの、純粋に心配する美しい黒曜石のような瞳を見返す事が出来ない。
「ジョージ、無理しないでね」
 ひたりと、清らかな冷たい手が額に触れた。
「一人で、無理しないで」
 ぞく、と下半身の血が動いた気がした。
 ミンシアは微笑んだ。
「熱はないみたいね」
「……大丈夫だ。……悪いが、一人にしてくれ」
 気を悪くした様子もなく、ミンシアは頷き、机から離れる。
 出て行こうとするミンシアの背中に、ジョージは声を掛けた。
「ミンシア。--ありがとう」
「……」
「心配してくれて……」
 消え入りそうな声だったが、ジョージは確かにそう言った。
 ミンシアは微笑み、
「やっぱり変よ、ジョージ。でも、どういたしまして。ここのドア開いてたかしら?閉めていくわよ?」
 ドアを閉じ、出て行った。

 気は強いが、悪い娘ではない。むしろ周囲に気を遣う性質の娘だ。話しているとすぐにそれは分かる。
 だからこそ、罪悪感に苛まれる。
「阿紫花……」
 ジョージはメガネを外し、放るように机の上に置いた。
 左手の親指で眉間を押す。
「……お前の負けだ」
「……まだ、終わってねえ」
「メインコンピュータの奥に入り込んだ。……完全にフルコントロール出来る。私の勝ちだ」
 一度進入すれば、後は容易い。数時間おきに暗号を換えてしまうシステムだから、再度進入するのは手間がかかる。しかし一度到達出来たのなら、二度目は近道が分かる。
 阿紫花の髪を掴み、咽喉奥に先端を押し込むように動かした。
「……っ」
 えずくような咽喉の動きが伝わってくる。
「フウのコンピュータの方が、私より攻略しやすいぞ。阿紫花」
「ング……ン」
「奥まで入り込んだ。今みたいに、無理矢理、中にブチ込んで」
 言葉で責められるのも興奮するのだろう、口内を犯されながら、それでも己のモノを、阿紫花は扱いている。
 被虐趣味でもあるのか。ジョージは淫らがましい阿紫花の姿に、己でも気づかぬ密かな嗜虐の快楽を覚える。
「もっと奥まで咥えろ、いつも下の口でやっているように。ああ、出せ。そんなに扱いて、どうだ?私のモノを咥えて一人で耽る味は」
 メチャクチャに咽喉の奥を突きながら、ジョージは囁く。
「イってみせろ、阿紫花」
「……!」
「メチャクチャにされたいんだろう?」
 ビクン、と阿紫花の身体が揺れた。
 咽頭の奥も揺れ、ジョージは自身を引き抜くために阿紫花の頭を引かせた。
「プアッ、ゲホッ、ゲッ、エッ、……ッ、あ」
 勢いよく先端から、阿紫花は与えられていた咽喉奥の刺激に咽ながら放出させた。目を閉じてそこを握り締め、喘ぐように啼いた。
 その顔に、ジョージは射精した。
 白い液体を口の中や頬にぶちまけられ、それでも阿紫花は恍惚とした表情に見える。目を閉じているせいか。
 腕から伸びたコードを、ジョージは端末から引き抜いた。再起動するのは数秒で済む。
 瞼に精液がかかって目が開けられないのか、と、ジョージはティッシュで阿紫花の瞼を拭ってやる。
 阿紫花は目を開けた。
「服が……」
「ん?」
「メチャクチャでさ」
 確かに、ズボンは不自然に皺が寄っているし、シャツやネクタイには精液が滴り落ちている。今もぽたりと汚している。
 ジョージはそれを拭ってやった。顔を拭いてやる。
「洗えばいいだろう、……立て」
 阿紫花を立たせ、ジョージは座ったまま腰を抱いた。阿紫花の腹の辺りに額が当たる。
「ジョージ」
「?」
 阿紫花は身をかがめ、ジョージの唇に吸い付いた。
 苦い。
「……」
「プッ、……あんたの味じゃねえか。そんな顔しなさんな……」
 阿紫花は笑った。
「あたしの勝ちでさ」
「何?」
 阿紫花はにやりと、黒猫が笑うように笑みを作る。
「仕事中の堅物焚き付けてその気にさせる、って、フウのじいさんと、博打をね……」
「何だと!?」
「あんたの好きそうな服まで借りてさ、いや貰ったんでさ。……」
「貴様……!筒抜けか!フウの悪趣味に、私を利用したのか!」
「インセクトで全部見られてんのは分かってんでしょ?今更、……見せ付けてやりゃあいい。あんたとあたし、生きて乳繰りあってンのを、あの生きたまま干からびたじいさんに」
「ふざけるな!……せっかくクラッキングしたのも、無駄か!」
 ジョージは怒り出す。「性悪め!お前が一番性悪だ!」
「はは……」
 阿紫花はそれでも笑っている。
 憎たらしくなってジョージが首を絞めても、笑ったままだ。
 机の上に押し倒され、身体のあちこちでばらばらと書類を落としながら、阿紫花は目を細めた。
「ひゃ、くすぐってえ、ジョージさん」
「お前は本当に厄介だ!性悪め、……」

 叫び、それでも。
 ジョージは押し倒した身体にのしかかる。
「悪戯にゃ仕置きがいンでしょ?……あたしに」
 阿紫花の笑みに、ジョージは。
「……性悪め」
 フウが着せた衣服を引き剥がし、身を沈めた。
 阿紫花は首をのけぞらせ、微笑んだ。
「退屈だけはさせやせんよ。……」

 

 その後。
「仕事は進んだかい?」
 帰ってきたギィは、明かりの点いた室内を見回した。
 書類がちらかり、それをジョージが片付けている。
「……」
「……」
 無言でギィはソファの上を見る。
 阿紫花が、肌蹴た衣服のままジョージのコートを掛けて眠っている。
「……大変だね、君も」
「……こんなのはいいさ」
 陥落したと思ったコンピュータが、実は屋敷の管理コンピュータだったと分かった時の落胆よりはずっとマシだ。
「あんな空軍並の防壁を、家庭用のコンピュータに使うな!」
 ジョージの叫びに、ギィは目を丸くし、
「何があったのか分からないが、……ジョージ」
「何だ!?」
「元気そうで良かったよ」
「それは皮肉か?」
「君が落ち込んでいるのは鬱陶しいんだ。それだけだ。それに僕は哲学者でも犬でもない」
「?」
「シェイクスピアだよ。……おやすみ、ジョージ。阿紫花」
 良い夢を、と、ギィは出て行った。
「……フン」
 ジョージは鼻を鳴らす。
 眠っている阿紫花の額に触れる。
 心配を、今日はいろんな人間からかけられた。
「……良い夢を」
 珍しく穏やかに、ジョージは呟いた。


 END
 

 後書き:
 ジョージは書きやすいです。阿紫花よりはずっと。  
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