印刷 高速道路 1000円 機械仕掛けの林檎 ポーカー・ゲーム 前編 忍者ブログ
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 ポーカー・ゲーム

 年に数回も使われないカジノルームの設備は古めかしかったがどれも小奇麗だった。掃除を欠かさないメイド人形たちの勤勉さを思うと同時に、そんな小奇麗な空間に似つかわしくない男の存在に、ジョージはうんざりと首を振る。
 ジョージの椅子の向かいの席では、阿紫花が煙草を吹かしながらテーブルの上の手札を見下ろしている。
「カモってな、一目で分かるモンだが、アンタ自分がどっちか判別する見方知ってやす?」
 ブランデーを一口含み、阿紫花は煙草を吹かす。
 阿紫花の手元の灰皿には、吸殻が山となっている。吸い過ぎだ。
 ジョージは眉をしかめ、
「知らないな」
「相手のツラ見てカモに出来ねえと思ったら、テメエがカモんなるしかねえんでさ」
 ククク、とチェシャ猫のように阿紫花が笑んで手札を晒した。
「フルハウスでさ。アンタは?」
「ストレート」
「アンタの負け。……アンタ、あたしの顔見て、どう思う?……」
 そう言った顔は紛れもなく、獲物を前にした顔だった。

「脱いで。全部脱いで。そのやらしいブツ隠してる布切れ全部ね」
 椅子に腰を下ろし、阿紫花は高く足を組んでベッドの前のジョージを眺めている。
「ヒーターの前じゃなきゃダメ?……」
 そう揶揄した阿紫花の吐く息が白い。暖房を点けていなかった冷えた空気の寝室の中、ジョージはコートを脱いだ。室温がマイナスでも平気だ。それより阿紫花の方が寒そうだ。
 タンクトップを脱ぎながら、ジョージが言った。
「ガウンを着たらどうだ。後ろにあるじゃないか」
「いいからとっとと脱ぎなよ。負けたら言う事聞く約束じゃねーか。負けたヤツぁ黙って言う事聞いてりゃいいんだ」
 阿紫花の右手にはブランデーのボトルがある。酒のせいで寒くないのか、とも思うが……。
 黙ってジョージはブーツとズボンを脱いだ。下着一枚になったジョージの前に、阿紫花がふらふらとやって来る。
 阿紫花は上目遣いで見上げてくる。下着の上からふくらみを撫で回し、
「綺麗な顔の痩せた女と、オッパイでかいブスだったら、あたしブスと寝やすけどね。ジョージさんイイ体してっからあたしの好みでさ。……ベッドに、寝て」
 押し倒されるように背後のベッドに二人して寝転がった。
 阿紫花の冷えた体に腕を回す。互いの体をまさぐった。
 ふと阿紫花が鼻で哂った。
「エロ臭ェパンツ履いてっから、……勃つとすぐ分かンのな。わざと?」
「何が……」
 ただの黒のビキニパンツだ。履き心地がいいから履いているだけの。
 だが阿紫花はにやにやと笑い、
「やらしいパンツ……あたしが興奮すると思って履いてンのかい?……」
「まさか。……興奮するか?」
「どうでしょ?……でも結構、悪くねえよ」
 唇が重なる。互いの口内を舌でまさぐっている間に、阿紫花の手に、下着が下にずらされる。器用なものだ。キスもうまい。
 いつも女相手にどんな手つきでせまっているのか分かるようで、ジョージは少しイラついた。それでも抱きしめる腕に力は込めたまま。
 そんな気持ちなどお構いナシに、阿紫花が哂った。
「ほーら、お外ですぜ」
 下着をずらされて、半ば反応しかけていたそれを露わにされて、ジョージはかすかに驚いた。
「おんもに出てェ、って……ありゃ、寒くてちっと萎んだな。『坊や』は根性ねえじゃねーか、ジョージ」
「……で、その坊やと何して遊んでくれるのかな」
「タマころがしでもしようかね?口がいい?手がいい?--坊や」
 ニヤニヤと笑みながら、着衣のままの阿紫花はジョージの腹の上に腰を下ろして酒をあおった。そしてそのまま、ジョージの唇に口内の酒を流し込んだ。
 苦いそれを、ジョージが思わず飲み下す。
「……何か、飲ませたか?酒以外に」
「さあ?どうでもいいじゃねえか。アンタ、今晩はあたしの好きなように動くお人形さんだ。あたしが何しても、文句ねえ約束じゃねえか?……」
 阿紫花はくすりと笑い、ジョージの腹の上から退いて立ち上がった。
「シャワー浴びてくっから。準備しねーとよ。イイ子で待ってな、坊や」
 
 阿紫花がバスルームに消えると、ジョージは寝転がったままため息をした。
 ポーカーで勝負、と阿紫花が言い出した時に逃げれば良かったのだ。賭け事などほとんど経験が無いのに、「あたしが強ェワケじゃねーのに、逃げるんで?……」と、暗に弱いと揶揄されて気に障った。配られたカードを腹立ち紛れに受け取って、ストレートでコールした。悪い手ではなかったはずだ。阿紫花が手札を二枚交換してフルハウスを決めるなど、普通なら考えにくい。
 イカサマだ。--そう咎めたてる気にもならなかった。現行犯で咎めなければ意味が無いのだ。犬の躾と一緒で、後から責めても拗ねるだけだろう。
 それに、たまにはいいか、と思ってしまったのだ。自分が負けてしまうのも、阿紫花が勝つのも、あっていいか、と。
「……たまには、な」
 そう呟いて、起き上がってナイトテーブルの上の阿紫花の煙草を貰おうとした。
 だが、腕が上がらない。
 それだけではない。上体が起こせない。
「なんだこれは」
 幾度も試みるが体が動かない。力の込め方が分からなくなったかのようだ。四肢が反応しない。腹筋にも力が入らない。
「アシハナ!……」
 叫び、阿紫花がバスルームから出てくるのを待った。
 絶対何かされた。先ほどの酒に何か入っていたのかも知れない。いや、その公算が大きい。それしか考えられない。絶対そうだ。
「アシハナ!」
「へえ。どうかなすったんで?……」
 がちゃりとバスルームの扉が開く。濡れた髪のまま、阿紫花がバスローブをまとって現れる。
「体が。動かないんだ」
「……。……-Oの連中への対策って、ジョージさん、フウのじいさんが考えてなかったと思いやす?……」
 阿紫花はぽたぽたと水を滴らせたまま、ベッドに近づいてくる。
「何の話だ」
「だから、-Oの連中をダメにする手、ってヤツを、フウのじいさんが考えてなかったのか、って話……」
 頭髪の水気をタオルで飛ばし、阿紫花は動けないジョージの傍に腰を下ろす。煙草に手を伸ばし、かちり、と、ライターで火をつけた。
「案外結構考えてたみたいですぜ。すっげー強力な磁石で-O体内のコンピュータ誤作動させる、とか、衛星から中性子爆弾、とか、-Oの通信ネットワークにウイルス流すとかね」
「……」
「ま、どれもこれも現実に実行するとなると人間にも被害が出るし、型落ちとはいえ、連中と共通の機械部品使ってるアンタにも被害は出ただろうぜ。あのフウのじいさんの事だからそれでもきっと、効果があると思ったらアンタの事なんざお構いナシに、核ミサイルだろうがコンピュータウイルスだろうが使っただろうがな」
 阿紫花は馬鹿ではないのだ。興味のある事に関しては。
 ジョージは見えない話の筋に嫌気が差していたが、珍しくまともに話す阿紫花の声を聞き入っていた。いつもこの調子で喋ればいいのだ。少しは賢く見えるから。
「効果がある案として、機械部分の機能さえ一時的にマイクロマシンで麻痺させちまえば……人間でも勝てるかも、って思ったんだと。対-O専用の擬似神経麻痺マイクロマシンを流して、連中を麻痺させちまえば人間でも壊せるし、アンタの体も一時的に動けないだけで済む」
「なんだと?」
「もし人間が全員いなくなっても、そいつがありゃ、少なくとも-Oは体が動けねえ間に自動人形にぶっ殺されていなくなったでしょうから。ま、今となっちゃ、どうでもいい話だし?そんなブツ誰も見向きもしなかったワケですけども。--地下の工房で偶然見つけちまいやしてね。-Oや、しろがね-Oの機械部分に働くマイクロマシンのデータと現物。……少し中身弄ってもいいか、ジョージさんに使っても大丈夫か、フウさんに確かめやしてね」
「それで……私で試したのか!」
「ご名答。どうですかい?体全然動かねえ、糸が切れたお人形の気分は」
 阿紫花の舌が、ぬるりと頬を撫でた。
「二時間くれえはそのまんま……」
 心理的な嫌悪で、ジョージは眉をしかめた。
「どうしてこんな事を」
「さあ?なんかやりたくなったから--でしょうかね。大丈夫でさ。二時間で戻るし、あたしもアンタのケツ掘ろうなんて思ってねえよ。ただちょいと、好き勝手人の体弄繰り回す気分を、味わいたくなっただけ」
 阿紫花の舌が乳首を舐めた感触に、ジョージが息を詰める。
「ちなみに、機械部分だけだから。動かねえの。生身か、有機神経通ってる部分は反応あるし、……機械のシステムで制御してこらえる、ってのは、出来ねえかも知れねえけど」
 ククク、と阿紫花が哂う。
「いつもみてえには、アンタ、イクの堪えらんねえかもな。あたしは全然構わねえが」
 言いながら、煙草の煙を吸い込んで、ジョージの性器を撫でながら乳首に吐きかけた。
 ヒーターの効果がやっと表れ始めた、それでも寒い室内で、その吐息はひどく揺らいで空中を彷徨った。
 阿紫花の髪は濡れたままだ。寒いだろう、と、その髪の水気を弾こうとして腕が動かないのを思い出した。
「……なら、精々楽しませるんだな」
 だから出来る限りの悪態をついた。
 なのに阿紫花は微笑み、
「ヒィヒィ言わせてやりやすよ」
 そう言って唇に吸い付いた。

 ちゃぷ、ちゃぷ、と水音が立つ。
 その水音のすぐ近くを、阿紫花の頭が上下している。
「……ここ、弄ってねえ、ってのが、ね……」
 舌でしゃぶりながら、阿紫花が吐息交じりに呟く。
「結構、意外だったり、すんだけど……」
「……そんな所を弄ったところで、自動人形が壊せるはず無いだろうが」
「へっ、……こっから、ビーム出したりしたらあたし笑い死にしやすがね。滑稽な芸見せりゃ自動人形てな、鈍くなるってんだ……充分、そんなのも通用すんじゃねえかと思う、がな」
「ハ……、あの司令なら、やりかねない改造ではあるがな」
「……」
 黒髪が上下して、時折、話すために顔を上げる阿紫花と目が合う。話しながらも舌先が動いて、確かに生身の快感を伝えてくる。
 その髪に触れたい。
 ジョージの眼差しに、察したように阿紫花は哂い、
「やっぱ、動けねえ、って、イヤなモン?口ン中ブチ込んでやろうって、悔しくなる?」
「ああ。だがそれより、髪を撫でたい」
「……」
 阿紫花が一瞬、止まった。
 しかしすぐに、
「……こっちの坊やは、充分楽しんでるようだがな」
 悪辣に口角を歪め、強く吸った。咽喉奥で締め上げる。
 えづくような咽喉の動きに、ジョージが「苦しいだろう」と声を掛けても、「これが気持ちいいんだろうが」と吐き捨てて、お構いナシだ。
「……確か、に……耐えられない、というのは、ある、かもな……」
 荒い息でジョージが呟く。いつもより快感が強い。いや、快感に耐える事が出来ない。心理的なものもあるかも知れないが、やはり機械部分の制御が関係しているのか、と、どこか冷めた頭で考える。
「でかく育ってやがんぜ、ジョージ……」
 感に堪えない、という声で阿紫花が囁いて、深く、幾度も口内で吸い上げた。
 その声に、呆気ないほど性急に、一度目の快楽を吐き出した。
「……う、っ、」
 吐き出されるそれと、まだ肉の内に残るそれを吸い上げて、わざと顔を見せたまま阿紫花は飲み下す。
「カワイイ声、出ンじゃねーか」
 そのまま、またイッたばかりの性器を舐め上げた。
「!! やめろ!あ、うあっ、それをやめろ!」
「くすぐってえ?」
「分かっているなら--」
「ちょっとなら、気持ちよくねえ?」
 触れるか触れないか、の舌の愛撫だ。
 射精後特有の、言葉に出来ないかすかな不快感か、それとも快感なのか。分からないが確かに反応はしているようだ。
「ぐ……う、っ」
「あ、なんか出そう?先っぽ……」
「もう舐めるな!もう……っ」
 先端を執拗に、しかし繊細に舌で割る動きに、苦しいような喘ぎしか出てこない。
 もし下肢が自由に動いていたら、腰を引いて拒絶していただろう。ジョージは悲鳴に似た声で叫んだ。
「やめろ!……頼むから」
 びくり、と。生身のその部分が震え、透明な汁気が滲む。
「はは、ガマン汁出た。気持ち良かった?」
「……ああ。もう触るな」
「そうもいかねえ。あたしまだ、気持ちよくなってねーんでね。……」
 阿紫花が起き上がり、ジョージのへそのあたりをを跨ぐように腰を下ろす。
 勃っている。その先端をジョージの顔に向け、阿紫花は哂う。
「舐めて」
 口元にあてがわれたそれを、特にためらいもなくジョージは含んだ。
 阿紫花をそれを見下ろし、わずかに腰を引いた。
「……犬っころみてえ。舐めろって言や、舐めンですね、アンタ……」
「舐めろと言ったのは君だろう」
「……しゃぶって。舐めて。もっと、……」
 咽喉を突くような勢いで、ジョージの口内にそれを突き立てる。
 異物に咽喉が痙攣する。
 吐きそうになって眉をしかめたジョージに、阿紫花がまた腰を引く。
「……苦しい?」
「……別に。それより、前だけじゃ物足りないんじゃないか?いつものように体が動いていたら、同時に責めてやれるのにな」
「……じゃ、ケツ舐めなよ。竿くれえテメエで扱くからよ」
 言い終わらない内に、顔の上に阿紫花の尻が乗せられる。
 肉の薄い、しかし弾力のある尻だ。圧迫感はあるが、苦しくは無いから先ほどよりはマシか。
 尻肉の奥の、皺の寄った襞に舌で触れた。唾液を塗りこめるように幾度も舐める。
「あ……」
 吐息と共に漏れるような阿紫花の声が、頭上から聞こえた。同時に、性器を擦るかすかな音も。
「っ、あ、イイ……」
 舌先で、探るように襞の奥に触れる。
「あ、あ……」
 内部が蠢いている。受け入れるのに慣れた体だ。
「は、はは……なあ、どんな気分?なあ?潔癖だったアンタが、あたしに顔にケツ乗せられて、ケツの穴舐めさせられてよ。しかも身動き取れねえカラダにさせられてよ。惨めな気分とかならねえ?……あ、待て、待て、待てったら。……」
 言葉で責めているつもりの最中に後孔を舌でこじられ、阿紫花が太ももを強張らせる。
「熱心、に、舐めやがんの、な……っ、待っ、舌、入れ、んなっ……」
 阿紫花はとうとう性器を掴んでいた手を離し、前かがみにシーツに手をついた。何度も唾を飲み込んでいる。
「あ……ン、イイ、……」
 腰が上下に揺れている。より強く圧迫され、「まさかこれだけでイかないだろうな」と、ジョージは一抹の不安と期待を覚える。
 「なるようになれ」とばかりに舌を押し込んでかき回した。
「ああっ、……ン」
 阿紫花の短い喘ぎ声の後、不意に顔の上の尻が退いた。視界がわずかに明るくなる。
 腹の上に阿紫花が座っている。後ろ手で上体を起こし、性器を晒して、足を開いて。
「足りね……」
 目を伏せた阿紫花が浅く、しかし色づいたため息をもらす。立ち上がった先端がぴくりと動いた。
 ジョージの視線の先に、先ほどまで舐めていた後孔がちらりと見えた。今すぐにでも押し倒して、全身のいろいろな部品にむしゃぶりつきたいような衝動に襲われる。
 舌先より確かな指先で存分にほぐして、押し入る寸前の開いた肉の喘ぎ声を聞きたい。潤滑油を塗り込めた後孔の内部を責めたてて、抑えられないだろう水音が聞きたい。肉と肉がぶつかり合う音や、阿紫花の快楽の悲鳴が聞きたい。
 自由が利かない癖に硬く滾る己の下肢の熱に、ジョージは唇を噛んだ。
 その顔を見た阿紫花が、小さく哂った。
「……待て、って言ってんだろーが。すぐに入れさせてやっから。ちょいと、慣らさねえといけねえけどな。アンタ動けねーから、テメエでやりやすぜ。見てるだけってな、どんな気分?悔しい?」
「……さぞいい見世物を見せてくれるんだろうな?夢中になって一人でイかないようにな。いつも堪え性がないからな、お前の坊やは」
「へっ、見てるだけでイッちまわねえようにしときなよ」
 ナイトテーブルの引き出しからジェルを取り出し、阿紫花はジョージの腹の上で足を開いたまま、見せ付けるようにゆっくり後孔に塗り込めた。
 ジェルのぬめりをいきわたらせるように、指一本だけを何度も出し入れする。
「もっと体を倒してくれないか?あまり見えない」
「倒すと、背中に硬いモンが当たるんですけどね。へし折っていいなら倒れやすよ」
 軽口を叩きながらも、阿紫花は少し上体を背面に倒した。丸見え、とまではいかないが、指が出し入れしている先が見やすくなった。
 指に弄ばれ赤く充血した粘膜が、ジェルに塗れてぬらぬらと蠢いている。何か、別の生物めいてさえいる淫靡さだった。
「見てるだけ、ってな、辛ェだろ?……いっつもだったら、アンタ、あたしの感じるトコ責めまくって……搾りやがるからな」
「今日はあまり責めないようだな。自分でやるとそんなものか。私だったらもっと深く入れるがな。……そうそう、うまいうまい。その辺りで指を曲げて……そうそう」
「っ……」
 前立腺を自分で刺激するように言葉で誘導され、阿紫花が息を詰める。どこが感じるか、など分かりきっているが、声で指示されての自慰にふけっているような気分になってくる。
 他の人間とも同じような事はあったが、自分は見せて感じる性質ではなかったはずなのだが。阿紫花は唾を飲み込んだ。
 ジョージはそんな事お構いなしに、
「もっとジェルを使わないと、後で痛いだろう。それに、指が足りないな?三本は飲み込まないと」
 三本--阿紫花はジョージの手をちらりと見た。白くて長い指だ。いつもだったらその指たちが、執拗に内部を責めたてるのだ。もういい、と阿紫花が悲鳴混じりに言っても執拗に--。
 思い出して、つい指を締め上げた。締めた指先が偶然、前立腺の裏をいい具合に撫で、思わず「ヒッ」と小さく鳴いた。
「そうそう、そういう声も」
「……うるせえな。口だけ動かすくれえなら黙ってな」
 照れ隠しに伝法に罵るが、ジョージはどこ吹く風、だ。気を悪くした様子も無い。
 阿紫花はジェルをさらに塗りこめ、指を、三本後孔に押し入れた。
 柔らかくほぐれかけていた其処は、さして苦もなく飲み込んだ。しかしさすがに、異物感がある。
「は……っ」
 息を漏らし、目を閉じて首をのけぞらせていると、ジョージの声がした。
「アシハナ、こちらを見ろ。一人で楽しんでいる気か?」
「……」
「私を見たまま、慣らせ。その方が感じるだろう?」
「……ケッ……、……感じンのは、アンタの方でしょ?」
 一瞬吐き捨てて、阿紫花はジョージを見た。
 ジェルを撒き散らすような激しさで指を出し入れしながら、
「へ……ど、うせ、体が動いたら、ああして、やろうとか、こうして、とか、考えるだけ、なんだろ……今……ぁ」
「……」
「どう、したい?もし、体が動いてたら、どう、した?」
 赤い顔で、快楽に溺れる寸前の声で、阿紫花が問いかけの形で懇願する。

 素直に「どうしたいか」言ってやるのも馬鹿らしかった。
 体の自由を奪ったのは阿紫花だ。腹の上で自慰にふけられても、いつものように責めたてるような精神的な満足感など微塵も感じない。むしろじりじりと焼け付くような苦く焦げた衝動が不快で不愉快だ。
 体さえ動けば、阿紫花が自ら弄る以上にダイレクトに感じさせる事が出来て、自分も満足するのに、なぜそれを放棄したのかが分からない。
 主導権を握りたいがため、だとすれば杜撰な見込みで事に及んでいるとしか言い様が無い。本人が気付いているのか、いないのか、は定かではなかったが、阿紫花はいつも精神的、肉体的な主導権を放棄したがっているように見えた。主体性がないのではない。受身に回って、何もかも与えられて翻弄されて、モノのように扱われたがっているように見えた。
 抱きしめても、どこを見ているのか分からない事がある。手酷く扱っても何も言わない。ただぼんやりと、抱きつく先があればいい、というような顔で抱かれるだけ。
 そんな生きた人形の顔に比べれば、必死に自慰を見せ付ける今の顔の方がずっといい、とは思う。
 だがそんな破綻と矛盾を繰り返す人間に付き合っていられるほど、ジョージは人間が出来てはいないのだ。
 無下にされれば腹も立つし、やられたらやり返したくもなる。衝動に身を任せる事もあれば、にべにはねのけて足蹴にしたい時もある。
 もっと器用な人間と付き合えば、阿紫花はマトモになれるのではないか、と思う。器用で賢くてセックスの上手い、しかしそこそこ品性と自制を忘れない出来た人間なら、こんな無様に抱き合ったりしないだろう。思い悩みながら抱き合うのは、疲れる。

「ジョー、ジ……」
 縋るような目で、阿紫花が呟いた。
 愛しているはずなのに、その意味が素通りする。
(それなのに君は)
 私たちはいつも、愛ではない何かで、抱き合っている。
(私といる)
 そう思ってやっと、ジョージは阿紫花が惜しくなった。
 愛ではないと自分に言い聞かせながらも。


 続きますw
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